Case Studies

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短期間で4つの革新的機能を実装。
Photon Industriesの採用によりメタバース空間内のマルチプレイ開発を短縮。

日本アイ・ビー・エム株式会社

2023年4月24日、日本アイ・ビー・エム株式会社は、企業や官公庁のお客様がメタバースを次世代チャネルとして活用するためのプラットフォームである「IBM Spatial Platform」を発表されました。

今回は、「IBM Spatial Platform」の3Dメタバース空間でのアバター実装、コミュニケーションなどにPhotonをご導入いただいた経緯や導入後の印象を、開発に携わった日本アイ・ビー・エム株式会社の方々に語っていただきました。

河添 由起子様
河添 由起子 様
所属:日本アイ・ビー・エム株式会社 インタラクティブ・エクスペリエンス事業部
役職:エクスペリエンス・コンサルタント、プロジェクト・マネージャー
岡本 茂久 様
岡本 茂久 様
所属:日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社 DX Centerイノベーション・ラボ
役職:シニアITスペシャリスト

―IBM Spatial Platformについてご紹介ください。

IBM Spatial Platform

IBM Spatial Platformは、企業がメタバースを次世代チャネルとして活用するために最適化されたプラットフォームです。メタバース活用の様々なユースケースのうち、業界・業務に依存しない汎用的なユースケースをMVP (Minimum Viable Product)としてご提供しています。具体的なMVPユースケールは、以下の4つです。

・Hall / Meeting Room:Hallでは、近くにいる複数のアバター間で自由に会話をする空間を提供します。クローズドな空間であるMeeting Roomでは、Room内のメンバーに限定して会話することが可能です。またMeeting RoomにはPC画面の共有が可能なモニターも用意しています。

Seminar Room

・Seminar Room:講師アバターが聴衆アバターの前でPC画面を投影し、プレゼンテーションすることができます。聴衆アバターは拍手などのリアクションを返したり、音声やテキストチャットで講師とのQAが可能です。

・Showspace:3D空間内の展示会場であるShowspaceでは、画像や動画、3Dオブジェクトなどの展示コンテンツを配置することができます。ユーザーは自由にそれらのコンテンツを参照したり、会場に配置された説明員アバターによる説明を聞いたりできます。

・watsonx連携:3D空間からwatsonxとチャットする機能を標準で実装済みのため、生成AIを活用したPoCもクイックに開始することが可能です。プロンプトや生成AIのチューニングにより幅広いユースケースに対応します。

―Photonを採用された理由や経緯、決め手などについて聞かせてください。

上記のような汎用的なユースケースを実現するにあたり、利用可能なサービスを複数検討し、その中の一つがPhotonでした。比較観点としては、サービス形態やサポート体制、利用実績などの基本的な項目に加え、接続性や拡張性(同時接続数や、既存システムとの統合など)、アーキテクチャーへの適合性、柔軟性、セキュリティー要件への対応可否などがありました。これらの項目について総合的に判断し、Photonの採用を決めました。決定にあたり、他社での採用実績が多い点と200人という同時接続可能数は大きな判断要素となりました。

Open Space

―アプリケーションのどの部分にPhotonを使いましたか?

3D空間内で複数のプレイヤー同士がアバターを使ってリアルタイムでやり取りするための機能をPhoton Fusionを用いて実装しています。また、空間内のテキストチャット機能の実装にPhoton Chatを利用しています。

―他のソリューションと組み合わせて実装されたところもあるかと思いますが、どんなものをお使いになりましたか?

3Dワールドのデザインは主にBlender、フロント開発にはUnityを利用しています。サーバーサイドはIBM Cloudにコンテナ化されたアプリケーションとして実装しています。

3D空間内の音声チャットについては、Agoraを利用しています。また、画面共有についても別のソリューションを利用しています。音声チャットにAgoraを採用したのは、Photon VoiceがWebGLをサポートしていなかったためです。

―Photonを使ってみていかがでしたか?

Photonを活用することで、マルチプレイに関わるさまざまな機能実装をPhotonに任せることができるため、短時間での実装が可能となりました。実装にあたり、Photonの技術資料(*)を参考にしたのですが、ちょうどPUNからFusionへの切り替えのタイミングでもあったため、これらが混在していて見分けるのに少し苦労しました。

無料である程度試せること、技術資料やサンプルが充実しており、かつ日本語であることなどから、導入の難易度は比較的容易だったと思います。

(*) https://doc.photonengine.com/ja-jp/fusion/current/getting-started/fusion-intro

―Photonを使うことによってどんな効果がありましたか?

やはり、開発期間の短縮効果が一番大きかったと思います。3D空間内のマルチプレイに関わる機能はPhotonに任せることができたため、開発者はそれ以外の機能開発に集中することができました。

―Photonを利用する上でのTipsはありますか?

細かいですが、Photonには、Regionという概念があり、これが自動的にアサインされるのですが、Regionが異なるとSession IDが同じでも同一空間で会えないことがあり、Regionを固定する必要がありました。

メタバース画像

また、Fusionトポロジーとして何を選択するか(Hostモード、Serverモード、Sharedモード)で振る舞いが変わるため、ユースケースに合わせて最適なものを選択する必要があります。今回、私たちは企業のためのメタバース・プラットフォームとして、永続的に3D空間が存在していて、そこにさまざまなユーザーが入ってくるオフィス空間のようなイメージで実装しました。そのため、トポロジーはSharedモードを選択しました。

―今後、「IBM Spatial Platform」の展開について教えてください。

3D空間やアバターを活用した新たなコミュニケーション・チャネルとしてのメタバースは、企業のサービス提供や業務の高度化と効率化を支援するための手段としても有用です。どこから始めるかは業界・業種はもちろん、企業の戦略、課題への優先度などにより異なるため、お客様と共にメタバースのビジネス価値や活用方法を検討しながら、最適なメタバース・ソリューションへと結びつけていきたいと考えています。

―今後のメタバース業界の展望についてどうお考えですか?

メタバース市場は、2021-2022年ごろ急速に期待が高まり、インターネット上でもしばしば話題となっていましたが、2023年に入ってからはそうした熱狂的な高まりは一段落し、より現実的な状態に戻っているように感じます。そのような中でも、メタバース活用についてお問い合わせいただく機会はむしろ増えており、次世代のコミュニケーション・チャネルとしてのメタバースの価値を理解し、その実用化を見据えた企業は、PoC(Proof of Concept)の実施を含め、戦略的な投資を行い、実行に移しています。顧客向けサービスのデジタル化やAIを含む先進テクノロジーの活用が進む中、ユーザー接点としてのメタバースはより重要性を増しており、企業におけるメタバース活用は加速していくのではないかと見ています。

Company Name 日本アイ・ビー・エム株式会社
Service Info https://www.ibm.com/blogs/smarter-business/business/metaverse-spatial-platform-solution-overview/
Website https://www.ibm.com/jp-ja

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